発泡スチロールの基礎

8つの特徴、原料、作り方、種類

発泡スチロールとは?

私たちの生活に欠かせない素材である発泡スチロール。実は「持続可能な社会の実現」に貢献する地球環境にやさしい素材であることをご存じでしょうか。発泡スチロールといえば、断熱性や軽量性、加工性などに優れた特性を持つことで知られていますが、そのほとんどが空気からできています。つまり、原料の使用量が少なく、省資源性に非常に優れた素材なのです。

さらに単一素材からできているためリサイクルしやすく、2021年における製品使用後の有効利用率は92.0%であり、循環型社会に適応した素材です。最近では、新型コロナワクチンの輸送容器としてもグローバルに採用されるなど、注目を集める発泡スチロール。素材として無限の可能性をもつ発泡スチロールの特徴について、わかりやすくご紹介します。

発泡とは?

発泡スチロールの「発泡」とは、空気の気泡によって体積を大きくすることをいいます。原料に発泡剤をくわえて加熱し、発泡させます。発泡の倍率は用途によって調整可能ですが、発泡倍率を50倍とした場合、全体の98%が空気です。このことが発泡スチロールのさまざまな特性の要因となっています。

スチロールとの違い

スチロールとは、炭素と水素の化合物であるポリスチレンのことです。スチロールを発泡剤で膨らませたものが発泡スチロールとなります。ポリスチレンはプラスチックの中で最も多く使用されている素材です。熱可塑性樹脂で加工性に優れるため、さまざまな成形が可能であり、また無味無臭、電気を通さないなどの特性があります。

発泡ポリエチレンとの違い

発泡ポリエチレンとは、ポリエチレンを原料として発泡させたものでEPE(Expanded Poly Ethylene)と呼びます。発泡スチロールとは違い、柔軟で曲げやすい特徴があります。工業製品の緩衝材や保温・保冷材として使用されます。

発泡ポリエチレンとの違い

発泡ポリエチレン

発泡スチロールの原料・作り方

原料

発泡スチロール(EPS)の原料は、石油から精製されたスチレンモノマーを重合したポリスチレンの小さな粒です。この粒にブタンやペンタンといった発泡剤を加え、直径0.3mmから2mm程度の半透明な原料ビーズを作ります。

原料

予備発泡

原料ビーズを100℃ほどのスチームで加熱することで、50倍に膨らませた発泡ビーズを作ります。発泡ビーズの内部は、各々が独立した無数の小さな空気の部屋で仕切られています。

予備発泡

成形

発泡ビーズを成形したい形の金型に入れ、110℃から120℃程度のスチームで加熱します。ビーズ同士が熱で融着されることで、発泡スチロールの成形品ができ上がります。

成形

発泡スチロールの種類

(1)EPS:Expanded Polystyrene(ビーズ法発泡スチロール)

発泡スチロールは、製法や用途の違いにより3種類に分類されます。一般的に発泡スチロールと呼ばれているのが、EPS(Expanded Polystyrene)です。表面に無数の発泡ビーズの模様があるのが特徴です。農水産物容器、家電・OA機器の緩衝材、外壁断熱の建材など、幅広い分野で使われています。

(2)PSP:Polystyrene Paper(発泡スチレンシート)

発泡スチレンシート(PSP)は発泡スチロールトレーと呼ばれ、お肉やお刺身などの食品トレー、納豆やカップ麺の容器、果物パックなど、主に食品容器として使われているものです。作り方は、原料を押出機に入れて、加熱、発泡させてシート状にした後、用途にあった型で抜くことで製品を作ります

(3)XPS:Extruded Polystyrene(押出法発泡ポリスチレン)

押出法発泡ポリスチレン(XPS)は、押出機により成形した板状発泡体のことです。住宅やマンションなどの断熱材や畳の芯材として使われています。製品は、青や緑、オレンジ色に着色されます。また難燃剤が添加されて着火しにくくなります。

発泡スチロールの8つの特徴

発泡スチロールは、以下の8つの特徴を兼ね備えた材質です。

  1. 断熱性
  2. 軽量
  3. 衝撃吸収性
  4. 低誘電率
  5. 耐薬品性
  6. 成形性
  7. 耐水性
  8. 加工性

1. 断熱性

発泡スチロールは熱伝導率が低く熱を伝えにくいため、断熱性に優れています。発泡スチロールの98%が空気ですが、そもそも気体は液体や固体に比べて熱を通しにくい性質があります。発泡スチロールの熱伝導率は0.03W/m・Kから0.04W/m・K程度であり、空気(0.0241W/m・K、0℃)とほぼ同じです。耐熱性としては、熱可塑性樹脂であるため高温に接すると軟化して膨張や収縮などの変形が起こりますが、EPSの耐熱温度である80℃(JIS A 9511:2006)までは問題ありません。

断熱性

2. 軽量

発泡スチロールの重量は、製品の体積のわずか2%であるポリスチレンの重さだけです。発泡倍率が50倍の場合、1立方メートルあたり20kgほどになります。軽量であるため、持ち運びしやすく、設置や撤去の負担を減らすことが可能です。看板などオブジェに使用した際、万が一落下や倒壊したとしても危険性が少ないため、子ども向けイベントなどでも安心して使用できます。

軽量

 

3. 衝撃吸収性

衝撃吸収性とは、外部からの衝撃を和らげ、一定の状態に保つ性質のことをいいます。発泡スチロール内にある空気は、それぞれ独立した気泡として存在しているため、衝撃吸収性に優れています。家電製品や精密機器などの包装材・緩衝材として製品を衝撃から守ることが可能です。

衝撃吸収性

4. 低誘電率

発泡スチロールは空気の誘電率と近く、低誘電率な素材です。高周波への影響が非常に小さく、電磁波の干渉を受けにくいため、EMC試験において装置を保持・固定する測定治具などに使用することができます。

低誘電率

5. 耐薬品性

発泡スチロールは、ガソリンやトルエン、アセトンなどには溶解しますが、灯油や軽油、硫酸、水酸化ナトリウム水溶液、エタノールなどに対しては、変形、収縮、溶解などの外観変化はありません。同様に、メタン、硫黄酸化物、硫化水素、アンモニアなどのガスに対する寸法変化率や重量変化率は0に近い値です。

耐薬品性が求められる研究開発分野での活用も期待できます。

耐薬品性

6. 成形性

発泡スチロールは、金型に原料ビーズを入れてスチームで加熱するだけで製造できるため、用途にあった金型を使用することでさまざまな形に成形できます。また発泡倍率も低倍率から高倍率まで調整できるため、用途に適した柔軟性や強度に成形することが可能です。

成形性

 

7. 耐水性

発泡スチロールは、防水性や水の浸透性など耐水性に優れています。発泡スチロール内の空気は、独立した気泡として1つひとつが融着しているため、水や湿気の侵入を防ぐことができます。

耐水性

8. 加工性

発泡スチロールは、軟らかく、熱に容易に融けるため、刃物や電熱線などで加工しやすい特徴があります。原料であるポリスチレンの耐熱温度が80℃から90℃ほどであるため、それ以上の温度で加熱することで軟化、融解します。容器や緩衝材などはもちろん、イベントで使用するオブジェや看板、工業分野などで使用する装置など、さまざまな形に加工することが可能です。

成形性

 

加工方法

発泡スチロールの加工は、ドリルやニクロム線などを使った加工機や手作業によって行なわれます。直線加工、曲線加工、溝加工、穴あけ加工、切削加工、貼り合わせなどの種類があり、さらに耐候性や耐久性を高める場合は、ウレタンコーティングを施します。

アデムカが行う発泡スチロールの加工は、加工機を使った工業技術と職人の手作業を融合することで、短時間で高いクオリティの造形物を製造することが可能です。

弊社では、まずお客様からご提供いただくイラストや写真を基にデザインを設計し、専用ソフトを用いて加工機を動かすためのプログラムを作成します。その後、加工機を用いて2次元熱線加工や3次元切削加工により、さまざまな形に加工していきます。

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発泡スチロールの加工・造形はアデムカにお任せください!

さまざまな優れた特性を持つ発泡スチロール。アイデア次第で多くの分野で活用できる可能性があります。アデムカでは、発泡スチロールの加工・ディスプレイ製作・オブジェ製作をはじめ、研究開発分野での活用に関するご相談も承っています。

発泡スチロール造形をご検討の方は、CADデータ、手書きの図面、写真など、作りたいイメージがわかるものをご用意ください。予算や納期の相談も柔軟にお受けいたします。長年培った豊富な実績とノウハウでお応えしますので、まずはお気軽にご連絡ください。

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